本論文の目的は,適性多面評価を用いて,技術系の課長を「管理職向き」の課長と「専門職向き」の課長とに,どの程度的確に弁別できるかを検証してみることにある。某化学工業会社の技術系課長123名に適性多面評価を行い,その結果と,「計画・管理」「対人関係」「専門技術・知識」「課長としての総合評価」の各側面に関する人事評価とをつけ合せ,分析をこころみた。その結果,(1)適性多面評価によって得られた管理能力因子得点は,調査対象者の管理能力をうまく測定し,他方,専門能力因子得点は,専門能力をうまく測定していた(2)適性多面評価の結果によって,管理能力専門能力ともに高い者,どちらも低い者,どちらか一方の能力が高く片方の能力が低い者などが明らかに区別できた(3)「課長としての総合評価」は,管理能力が高くても,また,専門能力が高くても,高く評価される傾向がみられた(4)わが国の企業においては,管理能力や専門能力とともにバイタリティが人事評価を高めるための重要な要素になっていた(5)同じ技術系の課長であっても,開発研究部門の課長の人事評価には,専門能力よりも管理能力のほうがより重視され,基礎研究部門の課長の人事評価には,前者の方がより重視される傾向がみられることなどが明らかになった。