今日,先進工業国において,自動車,農業機械,家電製品等の加工組立て型製品の産業分野は,多数の部品メーカーによって支えられて成立している。一方,こうした工業製品を国産化することによって工業開発を推進しようとする多くの低開発諸国が,この部品工業の育成という壁に阻まれて重大な困難に直面しているという現実が在る。本稿はこうした低開発諸国の工業開発努力に資することを究極目的としながら,過去約半世紀の間に急速な発達を遂げた我国自動車部品工業の経験を基にして,部品工業の発達過程が持つ特性の一端を探ろうとするものである。本稿は、まず、部品メーカーが発達するための基本条件を「市場の存在」と「自己競争力の維持」として規定し,我国自動車部品工業の場合,これら二つの基本条件を成立させる上で,政府による政策的支援のみならず,完成車メーカー,部品メーカー双方の経営政策が重要な役割りを果してきた点を明らかにする。