本論の目的は,日本企業の量産システムにおいて熟練が必要とされ,かつその中で熟練が育成・伝達されるメカニズムを探り出すことである.熟練者への調査から以下のことが導き出された.第一は,現実の日本企業の生産システムは科学的・工学的理論の未解明の領域に意図的,積極的に踏み込んだものであり,その領域での安定操業,効率化,及び新製品の開発などを実現するため熟練が活用されること,第二は,熟練の機械化と組織的労働の増大,及び多角化などにより,個人的な技能が組織的な技術となり,技能と技術の融合によって熟練者の技能をより高める効果を持つことである.